道産食材にこだわり、北海道の食文化を牽引していきたい。ーSapporo Cheese House Mero. 上石 伸一シェフー

チーズを楽しむ

札幌、狸小路の裏路地に佇む「Sapporo Cheese House Mero.」。北海道産チーズを贅沢に使用した本格チーズ料理や、チーズとの相性にこだわった選りすぐりのワインが楽しめ、女性を中心に多くの「チーズ好き」に愛されています。今回はこのお店の料理長である上石伸一さんにお話を伺い、チーズをはじめとした北海道で生産される食材の魅力や、シェフとしてのチーズに対する想いに迫りました。

ー北海道産の食材をふんだんに活用しているSapporo Cheese House Mero.さん。そこにはどのようなこだわりがあるのでしょうか。

Sapporo Cheese House Mero.のコンセプトとして、「北海道産チーズを活かした料理の提供」というものを掲げています。具体的には、北海道産チーズを使用したチーズフォンデュや卓上ラクレットチーズフォンデュを軸に、チーズはもちろんお野菜やお肉、ワインまで全て北海道産にこだわり、お客様に北海道を楽しんでもらえるような料理の提供を心掛けています。ではなぜ北海道にこだわるのか。それは、何より「北海道を全国の皆さんに知ってもらいたい」という想いがあるからです。北海道には本当に素晴らしいチーズ工房さんや生産者さんが数多くいらっしゃいます。私たちは料理を通して、北海道という唯一無二の地域性やその魅力をもっと全国の皆さんに知っていただきたい。そのような想いがあるため、北海道産の食材ということにこだわりを持っています。

看板メニューのひとつである「卓上ラクレットチーズフォンデュセット」。新鮮そのものである道産食材がラクレットの柔らかい味わいを引き立てる。

 

ー北海道を知ってもらいたい。という熱意があるのですね。

もちろん北海道産にこだわることで、素材の鮮度が保たれたままお客様にお料理を提供をすることができたり、四季折々の食材を活用した季節感のあるメニューの提供が出来たり、単純にお食事の質やバリュエーションに広がりを見せることが出来るなど、メリットも多々あります。しかしその本質は、「北海道を全国の皆さんに知ってもらいたい」という想いです。この想いをお客様に直に感じていただくために、私たちは「北海道産チーズで北海道旅行してもらおう」というモットーを掲げています。具体的には、お客様にお料理を提供する中で、私たちと契約しているチーズ工房さんの場所がどこに位置するのか、それがお客様にもわかるように地図を用意しています。そこにはお客さんにチーズを食べてもらいながら、北海道旅行をするような想像を膨らませていただきたいという意図が隠されています。

ー北海道を楽しみながら様々なチーズ工房を知ることができて、とても素敵ですね。

料理という形で北海道を紹介することで、お客様が「次は実際の工房に足を運んでみよう」という思いになっていただけると、私たちの持つ「北海道を全国の皆さんに知ってもらいたい」という想いも実り、かつ取引をさせていただいている生産者さんに少しでも恩返しをすることも出来るのかなと考えています。

「このような取材には慣れていないんです」とはにかむ上石さん。しかし北海道に対する愛や想いはしっかりと私たちにも届いた。

 

ー北海道の魅力を日々料理で発信している上石さんですが、そもそも上石さんが料理の道を志したきっかけは何だったのでしょうか?

もともと祖父母が料理関係の仕事をしており、幼少期よりその姿を間近に見ていました。その中で、次第に料理に興味を持ち始めたのがきっかけとなり、気付けば料理人を志していました。専門学校を卒業してからは、一流ホテルの厨房やイタリア料理店など、様々なお店で経験を積ませていただいて、現在ではキャリアとしては20年目をむかえます。

実は私、若い頃はあまりチーズを得意としていませんでした。単純にチーズの味が苦手だったのです。そのため、自分自身のチーズに対する知識や、料理への活用方法などは乏しいものでした。しかしその中で「苦手なものであるからこそ、しっかりとチーズについて勉強をしてみたい」という思いがあり、このお店で働くきっかけにもなりました。

店内はとても落ち着いた雰囲気で、内装にもこだわりが垣間見える。「配置やインテリアなどは工夫をし、高級感も出していきながら、それでいてお客様が気兼ねなくお食事をワイワイと楽しむことが出来るような、そんな空間づくりを目指しました」と話す。

 

ーチーズがあまりお得意では無かったというのは、とても驚きです。そんな中、チーズ専門店で働くにあたっては苦労もあったのではないでしょうか。

初めのうちは、正直チーズに苦手意識を感じてはいました。しかし、北海道産チーズについてまずは知るために、最初はとにかく調べることから始めました。どのような地域で生産がされていて、どのような特徴があるのか、生産者はどのような方なのか、など様々なことを知り、そして自分の舌でそれぞれの味の違いを確かめていきました。その中で分かったことや感じたことを自分で噛み砕いて、実際に料理として活かしていく方法を探りました。そうやって色々なチーズを試食していくにつれて、状態によっても味の変化が楽しめることなどの「チーズの面白さ」に惹き込まれていったんですね。その中で北海道産チーズの良さを理解し、また北海道産チーズの魅力に気づくことも出来ました。

また、チーズが苦手であった過去があるからこそ、チーズを食べ慣れている人には気付けない細かな味の違いなどを見抜くことが出来ていると感じています。そのような意味では自分の苦手部分を活用し、その部分を料理のアイデアに昇華する事が出来ているのではないかなと。

以上のような自分自身の経験も相まって、北海道産チーズの魅力をもっとお客様にも感じてもらいたいとより強く思うようになりました。

店内には数多くのワインが飾られており、その数の多さには驚かされる。Sapporo Cheese House Mero. さんはワイン選びにもこだわりを持っており、チーズとのマリアージュを楽しめるワインを中心に、奥尻ワイナリーのワインなど希少なものまで、多種多様のワインを揃えている。

 

ー北海道産チーズとの出会いが、上石さんのチーズに対する考え方を変えたのですね。

そうですね。北海道はとても酪農が盛んでありますし、その中でもチーズはいま大きな注目を浴びています。また、北海道産チーズは本場のフランス・スイスチーズよりも味わいが優しいという大きな特徴があります。そんな北海道産チーズの味わいを十分に活かせるよう、チーズ本来の味を殺さずに他の食材とうまく調和させることを目指して、日々料理を提供しています。

ー最後に、北海道に店を構えるチーズ専門店として、今後どのような存在でありたいでしょうか。

もちろん、「北海道を全国の皆さんに知ってもらいたい」という想いが第一にあります。北海道には素晴らしい生産者の方々がたくさんいらっしゃいますが、土地の広大さゆえにその素晴らしさが浸透しきれていないこともあると感じています。飲食店として様々な生産者さんと契約をさせていただく中で、生産者の方に少しでもスポットが当たるようなきっかけ作りを牽引していくような、そんな存在になれればと考えています。コロナ禍で厳しい部分もありますが、「北海道愛」があるからこそ、これからも従業員一同北海道を盛り上げるというひとつの目標に向かって、日々奮闘していきたいですね。

 

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