札幌の円山公園からほど近くにある隠れ家的なお店。地下鉄円山駅から徒歩5分ほどの場所にチーズフォンデュ&ワイン「円山別邸」はあります。こだわりのチーズによるラクレットとチーズフォンデュ、そしてワインを楽しめるお店です。ちょっとした非日常を感じながらゆったりとお食事ができます。
今回はお店のオーナーソムリエである田中栄治さんに看板メニューであるチーズフォンデュとラクレット、そしてワインの魅力についてお話しをお聞きしてきました。
−様々なお店が並ぶ札幌円山で、「チーズ」というお店のコンセプトはすぐにきまったのでしょうか?
ワインと何が合うか、すごく考えました。たとえばワインと焼き鳥、本当に何百という種類を自分の中でリストアップして。みんながたいてい思いつくものは一通り、ワインと焼肉だとか、ワインと鍋だとか、ワインとカレー鍋とか、ワインと蕎麦だとか、ワインと寿司だとか、ワインとハンバーグだとか検討しました。
自分ができるもの、お客様のニーズにありそうなもの、円山に似合いそうなものだとか、いろんなことを考えた中で、最終的に決めたのがチーズでした。チーズの存在を知らない人はいないし、北海道にはおいしいチーズもたくさんあるし、まだまだチーズに特化したお店は当時ほとんどなかったこともあります。
実は、コンセプトの前に今の場所、店舗を紹介されたのがオープンのきっかけなんです。この場所で何を提供できるだろうと考えた時に、まず思いついたのがちょうど勉強していたワイン。そこからコンセプトを考えに考えて、ワインとチーズを楽しんでもらえるお店にしようと決めました。
−「チーズフォンデュ&ワイン」のお店とありますが、チーズフォンデュという料理を選んだ理由は?
チーズ&ワインでも良かったんですけれども、なんかハッキリしたものをコンセプトとして打ち出したほうが、キャッチーでお客様にわかりやすいかなと考えました。それでいてみなさんが知っている料理、料理名として思い浮かぶものでチーズフォンデュだなと。
−たしかにオープンの2010年当時に「ラクレット」と言われてもピンとこなかったかもしれませんね。
そうなんです。もっとメジャーで誰でも知っているものでチーズ料理は何かなと考えました。となると、やはりチーズフォンデュだなと。
−ラクレットとチーズフォンデュで取り寄せている工房を変えているのには理由があるのですか?
以前、働いていたお店でたまたまラクレットを提供し始めて。当時はまだメジャーな料理ではなかったのですが、面白そうだなと。そのとき共働学舎さんとお話しさせてもらったんです。ちょうど共働学舎さんも札幌へ販路を広げたいと考えていたようなタイミングでした。それ以来のお付き合いですね。
チーズフォンデュのチーズはグリュイエールとエレメンタールをブレンドするのが一般的なんですが、その2つを北海道で作っているところはないかなと探した時に、ちょうど冨田ファームさんを見つけたんです。そして、冨田さんの方も工房として本格稼働し始めるタイミングで、すごい偶然のタイミングが重なったんです。
−お店を始めた10年前とチーズの味に変化はありますか?
あります。言葉を選ばずいうと、ヨーロッパのグリュイエールやエレメンタールから離れている気がします。より日本人の舌に合うように変化しているように思います。本場ヨーロッパの世界大会で日本のチーズが入賞するようになって、北海道は北海道で美味しいチーズを作ろうという方向に舵を切っているようです。とても良い傾向にあると私は思っています。
−味が変遷しているというのは面白いですね。
ワインもそうなんですが、例えば人間で言うとヨーロッパでは出来上がっているじゃないですか。もうおじいちゃんの世界ですよね。それに対して日本はまだ成長期という感じで、ワインもチーズも日進月歩という言葉がふさわしいくらいに日々変化しています。この成長が見られるのは、この時代を生きている私たちのメリットなんじゃないかと。
−お客様もチーズの味の変化は気づきますか?
気づく方もいらっしゃいます。お客様でも味の変化がわかるくらいチーズ自体が優しい味わいになっていて「美味しくなった」とおっしゃる方もいます。
−ラクレットやチーズフォンデュを提供する時のこだわりはどのようなところでしょう?
チーズの持つポテンシャルを取り出してお客様に伝えられるかを意識しています。間違っても逆に味を落とすことのないように。その時に、提供者としてプラスアルファはしたいなと。素材のポテンシャルをより引き上げられるような調理を心がけています。
−チーズとワインのペアリングはどのように意識していますか?
ワインは「調味料」という感覚です。チーズの美味しさ、それを引き立てるためにワインを添えてあげるという。醤油ってそのまま飲んでも美味しくないけど、料理にかけると美味しくなりますよね。焼き魚とか唐揚げにレモンをキュッと絞ったらすっきりたべやすくなったりも。
その感覚がわかったときに「ワインって面白いな」と思いました。勉強し始めた頃はざっくりですが、お肉を食べる時に赤ワイン飲んでちょっと油っこいなと思っていたのが、ちょうど良い加減になったり。
その「調味料」としてのワインを提案するのが私の仕事なのかなと思っています。だからこそシェフ兼ソムリエとしてお客様と接しています。
−ワインは産地にこだわっているんですか?
ワインについてはブランドや生産地にあまりこだわっていないですね。どれだけ素材に合う、チーズフォンデュに合いそうなワインがないかを基準に探しています。私の場合、実は元々「ワイン嫌い」からスタートしているので、どんなワインもフラットに選べるのが強みですね。
*ラクレットとチーズフォンデュを試食させていただきました!
円山別邸ではラクレットをスープに入れていただきます。
今までにない新鮮な食べ方でしたが、チーズの味をじっくり味わうことができます。
チーズフォンデュはひとり1ポットが用意されます。焦らず自分のペースで食べることができます。味わいはさっぱりクリーミーでした。たしかにこれはワインが飲みたくなります。
こだわりのお料理、ワインとのペアリングなどいろいろお話しいただきました。大変親しみやすいオーナーソムリエ様なので、ワイン選びで困った時も気軽にご相談ができそうです。チーズフォンデュとワインを楽しみたい方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。